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AEDがある安心から  AEDを使える安心へ

AEDがある安心から  AEDを使える安心へ

京都市内で唯一の総合高等学校として知られる洛陽総合高等学校。同校では、2004年にAED(自動体外式除細動器)の使用が医療従事者以外にも認可されると、ただちに導入。AED設置で安心を得る一方、京都大学の石見先生との出会いから“AEDがあるだけでは万一の際に命を助けることは難しい”という事実に気付き、年間の授業計画にAEDの使用と一次救命処置の授業を導入する取り組みをスタートさせた。このような体制が確立されるまでには、どのような想いと課題があったのか、取り組みの中心となり尽力された先生にお話を伺った。

生徒や地域のためAEDを即設置 安心を獲得する一方で、潜在的な不安は残り続けた

——2004年にAEDの医療従事者以外の使用が認可されてすぐにAEDを設置されたそうですが、設置にあたってはどのような経緯があったのでしょうか。

2004年当時、にわかにAEDが社会的な注目を集めた直後に、すぐに導入が検討されました。当校は私学ということもあり、意思決定のプロセスは非常にスムーズで、手間やコストより「生徒のためになること」を最優先にした環境づくりに取り組む伝統があります。機器は今に比べても非常に高価でしたが、校長先生も「生徒の安全、地域の安心になるのであれば」というお考えだったので、すぐに採用が決定しました。

設置後は、学校の入口にAEDがあることを知らせるサインを置き、万一の際には、近隣の住民の方々も使えるような運用を続けていました。一方で、いたずらを防止するために校舎内設置・保管していたため、休日の部活では使えなくなることや使い方について校内で周知するための具体的なノウハウがない点など、潜在的な課題が残っていました。心強いAEDの導入によって大きな安心を感じていたのですが、今振り返ってみると、当時のAEDに対する配慮はまだまだ不足していたのです。

生徒や地域のためAEDを即設置 安心を獲得する一方で、潜在的な不安は残り続けた

“置いてあるだけ”に危機感を抱き、使えるAEDを目指した取り組みが始動

——2013年ライフパックCR-Plusに更新し、設置場所の再検討やAEDを使った一次救命処置を授業への組み込みを行ったそうですが、その経緯と体制作りにあたってのご苦労をお聞かせください。

改めてAEDについての取り組みを考えるきっかけとなったのは、2013年の秋に京都大学の石見先生をお招きした私学連合会での救急救命講習でした。講習で学校保健主事がお聞きした“AEDを使った心肺蘇生を行うことができる人が増えなければ救命率は上がらない”という考えは、AED導入で安心を得ていた私たちにはとても衝撃的でした。すぐに校内で内容を共有し、改善に向けて動き出さなければいけないと直感。講習は人工呼吸を省略し胸骨圧迫のみに簡易化したPUSHコースと呼ばれる講習で、学校への心肺蘇生普及にも広く利用されているとのことでしたので、そのノウハウを当校でも活かせるとも感じました。

タイミング良く校舎の全面リニューアル時期と重なっていたため、設置場所の見直しから着手。運動部の先生とも相談して、AEDを運動グラウンドに面し、風雨を避けることができる場所に再設置しました。こうして休日の部活動中に万一の事故が起きたとしてもAEDがすぐに使用できるようになりました。併せて、管理係を部活動統括から保健室へと移すことで、バッテリーや電極パッドの使用期限にも気を配りやすくなりました。

“置いてあるだけ”に危機感を抱き、使えるAEDを目指した取り組みが始動

体験を通じた職員の理解が授業環境の整備を加速させた

次に、AEDを使った心肺蘇生法をどう校内で周知し、正しく使える人を増やしていくかが課題となりました。DVDによる分かりやすい説明があり、授業内で行える45分のPUSHコースの導入を前提に、まずはNPO大阪ライフサポート協会PUSH講習会として京都大学より講師をお招きして、体育科の先生と運動部の顧問に向けて指導のポイントを抑えた講習を実施しました。元々激しい運動の機会が多い運動部は、一般的な救命講習と心電図の検査は行っていましたので、講習実施のための理解を得るのは比較的簡単でした。次にその他の先生たちにも放課後の時間をもらい、青木先生が講師役となり講習を実施しました。その後、体育科に相談して保健体育の授業にAEDの講習を組み入れる際にも、職員全員が授業を通じて体験する大切さを理解していたことが大きな後押しになったと思います。最終的には、夏の大会前までに運動部の全生徒を対象に講習を行うことと、二年生の全生徒を対象に年に一度保健体育の授業でPUSHコースの授業を実施してもらうことが決定。併せて、クラスの全員が一度の授業で確実にトレーニングキットに触れられるように20セットの購入を提案し、準備しました。

先生のなかには「なぜ時間をかけて学ぶ必要があるのか?」と心肺蘇生の方法を教えることに積極的でなかった先生もいたようですが、いざ体験してみると興味関心を示してくれるようになりました。「胸骨圧迫を続けるのは、こんなに大変なんだ」「これは一度体験しないと分からないね」などの感想もあり、体験から学ぶ大切さを実際に感じてもらうことができました。

体験を通じた職員の理解が授業環境の整備を加速させた

子どもたちの成長を助け合える地域づくりに向けた大きな第一歩に

——実際に授業で講習を受けた生徒たちからはどんな反応がありますか?また、今後に向けて、さらにどんな課題があるとお考えですか?

授業の救急救命講習では傷病者への声かけなどもあるため、生徒同士で多少の照れもあるようです。しかし、生徒たちからは「自分に人が救えるかな?と考えてしまった」「看護師のお母さんと、AEDについて話した」などの声があり、その使い方を学ぶ以外にも、一次救命処置について改めて考える良いきっかけにもなっているようです。

半年という期間で、救急救命の授業を導入する事ができたのは、職員室や保健室の養護教諭と密に連携を図りながら、体育科や部活動に積極的に働きかけていくことができたからだと思います。今後は、この体制をどこまでしっかり継続できるかが課題のひとつです。ガイドラインの変更や校内の担当者の入れ替わりも想定しながら、しっかり準備したいですね。

学校における心肺蘇生の教育は、単にその方法を学ぶだけでは不十分だと思っています。命を救うという大きな役割を学ぶことで、命の大切さを感じてもらえることが理想です。生徒ひとり一人の意識の向上を、万一誰かが倒れても迷うことなく手を差し伸べられる地域の雰囲気づくりに結びつけていきたいですね。

子どもたちの成長を助け合える地域づくりに向けた大きな第一歩に
授業内で行なえる心肺蘇生教育
授業内で行なえる心肺蘇生教育
大阪ライフサポート協会が推進するPUSHコースを取り入れた講習を、年一回二年生を対象に保健体育の授業で実施。CPRトレーニングボックス、DVD教材を使用することで、心肺蘇生法とAEDの使い方を、短時間で効率よく学習できる体制を整えた。心肺蘇生の技術を伝えるだけではなく、命の大切さを感じてもらう機会として取り組んでいる。

Voice

AEDの講習実施後、生徒や先生たちからは、さまざまな感想が聞かれました。

生徒からの声

  • 講習を受ける前は、AEDについて何か知っていましたか?
  • 講習を受けてみた感想はどうでしたか?
  • 今後、どうすればAEDがもっと普及していくと思いますか?
生徒からの声
  • 講習を受けるまでは、AEDについては“病院で使う機器”というイメージくらいしかありませんでした。
  • 一定のリズムで押し続けるのは想像よりもずっと大変でした。講習で行なった倒れている人への声かけは恥ずかしかったですが、実際に駅などでAEDを見かけると「実際にここで倒れる人がいる可能性がある」と思い、恥ずかしいなんて思っていられないなと思いました。
  • 学校だけでなく、社会人になって会社などでも講習の機会を設けて欲しいなと思いました。設置場所についても気をかけるようになり、デパートなどのAEDは、もっと看板で分かりやすく設置するべきですし、誰もが通る場所で目線が高い場所にあればさらに良いと思います。
生徒からの声
  • 小学校の頃からAEDの存在は知っていましたが、使い方はまったく知りませんでした。
  • ずっと同じ動きを続けるのは腕がとてもツラかったのですが、実際に誰かが倒れていたらどうやって助けようと考える良い機会になりました。私のお母さんは病院で看護師をしているので、講習のあとにAEDについてや人助けについて家族で話し合う機会も持てました。
  • 町内などの地域単位で、講習会を行なうのが良いと思います。そうすれば、身近な人を助けるイメージがより持てるのではないでしょうか。さらに、住宅地域にもっとAEDが設置してあると良いですね。たとえば、町役場などの施設や町会長さんの家など、走って取りに行ける身近な距離に置けばいざとなったときにすぐ対応できると思います。
生徒からの声
  • 中学の時に、消防署から講師の方に来ていただいて講習会を受講したことがあります。
  • 中学時に講習会を受けていたのですが、忘れていた事も多かったです。もし人が倒れていたら、講習を受けた自分が動かなきゃという気持ちになりました。5cmの深さで押すのは男子でも大変そうでしたし、交替のタイミングを合わせるのは難しかったですね。お母さんがAEDの講習を受けたことがあったので、学校でAEDの講習を受けた話しで盛り上がりました。
  • 学校で行なっているように、まずは若い世代が学んで、その人が他の世代に教えていき救命について興味を持てる人が、もっと増えれば良いと思います。コンビニなど、ここにいけば必ずAEDがあるという場所も、もっと増えれば良いですね。
生徒からの声
  • AEDの存在は知っていましたが、病院で使われる機械というイメージがあるだけで、具体的には知りませんでした。
  • 講習を受けてみて、実際に町中で人が倒れていたら、果たして自分が冷静に人を助けることができるのかを考えてしまいました。自分でも初めての経験だったので、帰宅後は家族と「こんな講習があったよ」という話をするきっかけになりました。
  • 第一歩として、まずは講習を受けた僕らが、家族や親戚に直接話して伝えることから広げていければ良いと思います。
生徒からの声

先生からの声

多くの若者が突然の心停止で命を失っている事実を知り、驚きました。今までAEDは、「置いてあるわ」という認識がある程度の、遠い存在でした。講習ではじめてAEDの手順を知り、機器を触り、使えるAEDのための一歩になったと思います。

以前、大阪市内の中学校に勤務していた時に、倒れたご主人の助けを求めて、お婆さんが職員室に駆け込んできたことがあり、AEDの訓練を受けた先生と駆けつけました。その時は、同時に救急車が到着し、AEDを使用する機会はなかったのですが、地域との関わりにおいてもAEDはとても特別な存在であると痛感しました。

今回講習を受け、救急時の対応について理解を深めることができ、少しでも周りの人のために備えられることをうれしく思っています。

取材協力

洛陽総合高等学校
洛陽総合高等学校は、京都市中京区・京都の中心部に近い恵まれた場所にある京都市内で唯一の総合高校です。創立90周年を迎える私たちの学校は、京都という町に育ててもらった学校として、地域に根ざした取り組みと教育を行なっております。本校の大きな特徴となる総合学科は、系列ごとに様々な選択科目が開設されています。 一人ひとりの興味・適性・進路に応じて、幅広い選択科目の中から選べるカリキュラムを用意し、それぞれの分野で活躍できる人間を育てます。

総合学科

一人ひとりの興味・適性・進路に応じて幅広い選択科目の中から、自主的に選べる独自のシステム。これまでの普通科と専門学科の枠を超えて誕生した学科です。自分の興味・適性・進路に応じて、普通科目と専門科目にわたる幅広い選択科目の中から自分で科目を選択し、学習することができます。

教養系列
普通科高校と同じ主要5教科を中心に学ぶ系列です。他の普通科高校とは違い、個々の学力に応じた授業を選ぶことができます。大学進学、公務員、語学系などの専門学校を目指す人に向いた系列です。
情報系列
1年できっちりと情報の基本(パソコンの操作など)をマスターし、ゲームやアニメ、音楽、あるいは本格的なプログラミングを学びます。コンピュータの専門学校との連携授業もありますから、どんどん難しいことにチャレンジしていける系列です。
調理系列
パン作りから本格的な和食まで、 食の基本をしっかり学びます。最新鋭の調理器具が揃った調理教室と、京都の有名店の職人が臨時講師として招かれる機会もあり、調理の基礎技術から心構えまでたっぷりと時間をかけて追及できます。
美術・工芸系
日本画、洋画といった伝統的な絵画だけではなく、イラストやアニメ、さらに彫刻や陶芸まで、さまざまな角度から「美」について学び、理解を深める系統です。実際に画家や芸術家として活躍している先生から、身近に指導を受けられます。
保育・福祉系
将来、保育士を目指そう、あるいは福祉の仕事を目指そうという人のための系列です。音楽、ピアノ演奏、ダンスといった人と心を通わせるための学べる科目が揃っています。お年寄りや子供、不自由な人たちの現場・環境を知り、知識を学ぶことができます。

洛陽総合高校の特徴

好きな科目が選べる時間割
自分の時間割りを自由に作れます。1年生の時にしっかり未来を考えて、2、3年では好きな科目をどんどん選べるカリキュラムになります。
産業社会と人間
大学や専門学校の見学、さまざまな職種の方の講演、インターンシップや、京都の伝統産業の見学など、社会に触れる授業を用意しています。
洛陽総合高校の特徴