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AEDと小さな勇気で救える命がある KEEP THE BEAT

KEEP THE BEAT

安心をホテルのサービス品質へAEDに馴染むことで“迷わず使える心”をつくる~ ホテルルートインの取り組み ~

ホテルルートインをはじめとして、全国に290店舗以上のホテルやリゾート施設を運営するルートイングループ。公共性が高く、2020年の東京オリンピックに向けて海外観光客の増加が見込まれるホテル業界にあって、利用者の安全・安心を守ることは大きな課題のひとつ。同社は、AED設置拡充の先駆者として、積極的な設置と安全への対策を進めてきた。設置にあたっては、どのような課題があり、心肺機能停止傷病者の発生に備えてどういった準備と運用がなされているのか。2008年の初期導入と耐用期間を迎える7年後の切り替えに尽力され、各店舗の取りまとめ役まで担う同社購買部の川邉 陽永氏にお話を伺った。

川邉 陽永様
ルートインジャパン株式会社
ホテル購買部 ホテル購買課

川邉 陽永
歯科医療業界や大手企業のセキュリティ部門を経てルートインジャパン株式会社に入社。購買部に異動後は、AEDの導入・更新時の社内外との折衝、各店舗のAED耐用期間や交換時期の管理、利用状況の取りまとめなど、お客様の安心・安全を叶えるための有効利用を促進する役割を担っている。

お客様が安心して休息できる環境を提供できるようAED約180台を全店舗一斉導入

いち早くAEDが設置されることになった経緯と、
2015年にライフパックCR-Plusに更新した際の製品選びについてお話をお聞かせください。

私どもは、ホテル事業者として、いかにお客様に安心して快適にご宿泊いただけるかを常に考えています。宿泊者の中には、体調に不安を抱えている方、心臓に疾患を持っている方もいらっしゃいますので、お客様一人ひとりの状況とお気持ちに合わせた「安心・安全」をご用意する必要があります。実際に就寝中などにお客様が体調に異変をきたされる場合もあるため、万が一の事態に備えて日頃から訓練を重ね、安全を最優先に考えることが全店舗に共通した方針です。

2008年にAEDの全店舗導入を決めた当時は、AEDの認知度が徐々に高まり、医療従事者でなくても使用できることが広く理解されはじめた頃でした。AEDは今より高価でしたが、日頃からお客様が安心できる環境づくりを第一に考えていたため、どうしても必要な投資であると考え、約180台の全店舗一斉導入が決定しました。導入にあたっては、ホテルの運営管理部門が計画し、購買部にてメーカーとの交渉役や経営陣への稟議などを行いました。医療系の現場にいた前職の経験から、工業製品に比べて医療機器であるAEDの値引き幅が少ないことも知っていましたので、経営層への稟議を通す際には、そのあたりの事情をふまえて説得材料としました。

お客様が安心して休息できる環境を提供できるようAED約180台を全店舗一斉導入

2015 年春に初期に導入したAEDが耐用年数を迎えるにあたって、AEDの入れ替え計画の立案と実施、それらに付随する各店舗の運用状況の管理を私が担当することになりました。入れ替え機種の選定にあたって、もっとも大切にしたことは、AEDの品質です。命に関わる医療機器ですから、どのメーカーも質の高い製品が揃っていたので、選定は難航しました。入れ替え前の機種は耐用年数7年でしたが、メーカー保証は5年のみでした。メーカー保証が2年間受けられない状態で使用するのは非常に不安感があり、またそのことを少々残念に感じていました。最終的に入れ替え機種に決定したフィジオコントロール社の製品は、8年間という長いメーカー保証が受けられることが決め手となりました。保証の長さが品質への自信の現れであると感じましたし、世界的なシェアが大きかったことも、安心材料となりました。

 いつでも手の届くところにAEDを設置“迷わずAED”を持ち出すことを習慣化

2015年の春にAED更新を行った際の経緯と体制についてお聞かせください。
また、AEDの設置場所や管理をする上で気をつけていることをお教えください。
 いつでも手の届くところにAEDを設置“迷わずAED”を持ち出すことを習慣化

2008年に一斉にAED導入を決定して以降も、毎月のように新店舗がオープンしており、現在ではAEDの配置対象となる店舗は260店舗を超えます。それぞれの店舗に置かれたAEDが耐用年数を迎える時期に合わせて個別に入れ替えを実施する必要がありますので、まずは初期に導入したAEDの総入れ替え前に全店舗一斉アンケートを実施し、すべてのAED出動履歴や耐用年数の確認を行いました。支配人、マネージャー、チーフクラスのスタッフをAEDの管理・運用責任者としていますが、人事の入れ替わりもありますので、管理を店舗だけに任せると、漏れが発生するリスクがあります。すべてのAEDを購買部が一括管理し、AEDが耐用年数を迎える2カ月前に改めて各店舗に個別アンケートを実施することで、漏れがなくAEDの切り替えが行われるような対策を行っています。

 いつでも手の届くところにAEDを設置“迷わずAED”を持ち出すことを習慣化

各店舗のAEDの設置場所は、特定のブースを設けていません。「いつでもスタッフが手の届く場所」という視点で、いつでも機器の状態を確認できる置き場所を考えるように各店舗に指導しています。これはAED初期導入当時から変らない方針で、事務所やフロントまわりなどの動線上に置き、通常の業務に馴染ませることで、万が一の時に客室に駆けつける際、迷わずAEDを携帯して駆けつけることができます。一次救命においては、一分一秒が大切ですから、お客様の元に駆けつけてから、もう一度AEDを取りに戻るという事態は避けるべきという考えです。新店舗をオープンする際には、細かな備品にいたるまで置き場所が設計図面に反映されますが、AEDに関しては特別な設置場所を設計図に書き込むことなく、フロントまわりや事務所に置くことを前提で設計されることになっています。

すべてのスタッフが救命現場に遭遇することを想定して継続的な訓練を実施

つねに使えるAEDを目指すために、万が一の事態に備えてどのような取り組みを行っているのでしょうか?
すべてのスタッフが救命現場に遭遇することを想定して継続的な訓練を実施

当社グループホテルは、毎月15日を防災の日として、店舗ごとに避難経路の確認や救急救命手順の確認などのテーマを設定して防災体制と意識を見直す機会としています。新規店舗オープンの際には欠かさず救急救命の講習を行うほか、年に1度は大規模な防災訓練を行います。

当社グループホテルは準社員(パート・アルバイト)を含めると1万人以上のスタッフが在籍していますが、それぞれのスタッフが、ひとつの仕事だけでなく、複数の役割をこなせるように業務指導をしています。オールマイティに仕事ができることで、スタッフひとり一人が仕事に対する誇りや責任を持つことができ、お客様への信頼や安心にもつながると考えているからです。

すべてのスタッフが救命現場に遭遇することを想定して継続的な訓練を実施

AEDについても、すべてのスタッフが救急の現場に居合わせることを想定して、“迷わずAEDを使えること”を意識した社内教育を実施。消防署のデモ機を使ったAED訓練の受講を徹底し、客室清掃を行うハウスキーパーなどを含めたほとんどのスタッフがAEDを使うことができます。訓練を通して「もしもの時には1分1秒でも早い処置が、命を救うために大切」であることがスタッフ共通の認識となっていますし、その心構えが「何かあれば、まずAEDを持つ」という意識にもつながっていると思います。消火器の使い方や避難訓練など、実際に行動したり触れたりしないと分からないことも多くあります。同様に、一度でもAED講習を受けることで「AEDのフタをあけて、あとは音声指示に従えば大丈夫」という安心感を持つことができていると思います。

日頃の訓練通りに迷わずAEDを使用後遺症もなく無事に救命できた事例も

AEDが設置されてから現在までの間に、どのような事故が報告されていますか?
日頃の訓練通りに迷わずAEDを使用後遺症もなく無事に救命できた事例も

直近の8年間で、AEDが使われた事例としては、電極パットを貼るまでに至ったケースが数件報告されています。気分が悪くなられた方がいらっしゃれば、万が一のことを考えてAEDを持参するケースが数多くありますので、電極パットを貼るまでに至らなかった出動事例を含めれば数えきれません。使用事例のほとんどが、機器の自動診断により電気ショックの必要なしを判断されましたが、愛知県小牧市にある「ルートイングランティア小牧」では、実際にAEDによる処置が行われました。現場に居合わせたスタッフ数名の迅速な対応もあり、お客様は後遺症もなく復帰することができました。当時の新聞にも取り上げられ、担当のスタッフが小牧消防本部より感謝状を拝領しました。AEDがなければ万が一の事態も考えられましたから、AEDの導入を推進してきた購買部、運営管理部のスタッフ、そして“迷わずのAED”を意識して訓練を続けてきた各施設スタッフの間に、その取り組みが一気に報われたような大きな達成感が広がったことを覚えています。

社会の安全意識に合わせた対策と周辺地域の見守りを継続していく

スタッフの高い救命意識とAEDの配備により、確かな救命体制が整っていると思いますが、
今後はさらにどのような対応が必要になってくるとお考えでしょうか。
社会の安全意識に合わせた対策と周辺地域の見守りを継続していく

社会の安心・安全に関する機運の高まりやお客様のニーズに応じてホテル側の設備や対策も臨機応変に対応していく必要があると考えています。近い将来、生活者全体の救命意識と知識がさらに高まれば、ホテルに滞在している方自らがAEDを操作できるケースも増えてくるかもしれません。そうなるとAEDがフロントに用意されているだけでは不十分です。ホテル側は、設置台数を増加させる必要があると思いますし、設置場所についても再考が必要になってくるでしょう。常にお客様の立場に立ちながら、その時々でベストの対策を考え続けたいと思います。

ホテルルートインは、郊外にも店舗が多く、地域の安心・安全を担う立場でもあります。ホテルの入口やフロントにはAED設置店舗であることを示すステッカーを貼り、周知を行っています。これからも地域の安心を見守る意識をさらに高め、お客様はもちろん、地域にお住まいのみなさまにまで安心を分け合える存在であり続けたいと願っています。

ルートイングランティア小牧の救命事例

不測の事態にも、動揺することなく発揮されたスタッフのチームワーク

2014年の4月、当ホテルに併設されていたスポーツクラブのプールで、男性のお客様が水泳中に突然意識を失いました。居合わせたスポーツクラブのインストラクターがすぐにプールに飛び込み男性の救助に向かいましたが、全身の力が抜けた体は想像以上に重く、近くにいたスタッフの協力を得て、ようやく引き揚げることができました。男性に呼吸がないことを確認すると、インストラクターはただちに心臓マッサージを開始し、その後すぐにAEDを持ったスタッフが合流しました。男性の体はプールの水で濡れていた為、電極パッドが貼りづらい状況でしたが、インストラクターは動揺する事なく落ち着いて対応。続いてAEDのガイダンスに従い、自動診断後に電気ショックが行われました。その後もインストラクターは救急隊の到着まで、手を止めることなく胸骨圧迫を行いました。

早い発見、迅速な処置、無駄のない連携が傷病者の一命を取り留めることに

早い発見、迅速な処置、無駄のない連携が傷病者の一命を取り留めることに

救急隊が到着し、病院に向かうまでの間に傷病者の状態が改善。当時私は救急隊を現場までの誘導を行いましたが、その時の恐怖と不安から改めて救急救命に対応していく難しさと大切さを考えさせられました。スタッフから無事に傷病者の意識が戻ったとの連絡を受けた時の喜びを今でもはっきりと覚えています。その男性は、後に社会復帰され、うれしいことに再びスポーツジムに通っていただいています。スポーツジム内のどこであっても、すぐにAEDが使えることを心がけ、3フロアあるジムの中間階にAEDを設置していたことが、スムーズな連携につながったと思います。また、スポーツジムのスタッフは日頃から救急救命の訓練を行っておりましたので、慌てることなく対処できたことも良い結果につながった要因のひとつだと思います。

今回の緊急事態をきっかけにして生まれた新たな変化

今回の緊急事態をきっかけにして生まれた新たな変化

ホテルのスタッフも「誰もがAEDを身近なものとして使えるように」と毎月15日の防災の日に、AEDの使い方を共有していましたが、実機を使った訓練を経験したスタッフは少数でした。事故をきっかけにスタッフの中で「実際にAEDを使った訓練をしておきたい」「自分の大切な家族のためにも知っておくべき」という思いが広がりました。
そこで、小牧市消防署に相談し、救命講習会を開催することを決めました。講習を受ける前は、AEDに対して「電流が流れる為、慎重な取り扱いが必要な医療機器」というイメージを持っていましたが、受講後は「AEDの使用はそんなに難しくない」という声が多く聞かれました。当日都合で参加できなかったスタッフからも「次の機会にはぜひ参加したい」という積極的な声もあがっていますので、よりAEDをスタッフに馴染ませるためにも、最低でも年1回の定期的な救命講習を行えるよう、年次計画を立てています。
設置場所についても検討しました。当初はAEDをフロントに置いていましたが、ホテルの各施設からの動線を考慮して、置き場所を事務所にある防災用品が入ったロッカーに変更しました。こうすることで、万が一の事態があれば、救急箱やチェーンカッターが入った袋といっしょにAEDを持って出ることができます。

お客様の安心を預かる高橋様の想い

お客様の安心を預かる高橋様の想い

私は、店舗のAED管理責任者として、毎月の業務予定のひとつに “AEDの点検”を組み込んでいます。スタッフには新入社員や準社員(パート・アルバイト)もいますから、誰が万が一の事態に遭遇しても、ベストな対応が取れるようにすることが私の責任でもあります。常連のお客様のなかには「また帰ってきたよ」と声をかけてくださるお客様もいらっしゃいます。私どものホテルは、わが家のようなホスピタリティと安心感を提供することが使命です。「お客様の安心は、私たちにお任せください」という気持ちを持ち続けるためにも、今後もスタッフへの情報共有や訓練をしっかりと行って参ります。

スタッフの声

伊藤美恵
ルートイングランティア小牧 フロント伊藤美恵
これまでも、先輩スタッフの姿勢を通して「何かあれば迷わずAEDを持っていく」という意識はありましたが、プールでの事故を通して、約300人のお客様の安全を預かる責任を改めて感じました。救命講習は、適度な緊張感のなかで実践さながらの訓練をすることができたので、とても参考になりました。
花木未菜子
ルートイングランティア小牧 フロント花木未菜子
AEDの使い方は、小学生の時にひと通り教わったことはありましたが、忘れていることもありました。救急救命のプロである救急救命士の方に丁寧に教えていただき、手順のポイントが再認識できたので、以前より自信がつきました。事故の際にスムーズに動けるようにするには、定期的な訓練を行っておくことが大切だと実感しました。

救急隊の視点

倉知 和美様

ルートイングランティア小牧の救助事例では、スポーツジムスタッフの方の適切な初期対応があり、傷病者が無事に早期の社会復帰を果たすことができました。AEDの普及台数に比例して、現場にAEDが用意されているケースは増えてきていますが、バイスタンダー(発見者)がAEDを使うことができたケースはまだ少ないのが実情です。対応が早ければ早いほど、その後に社会復帰できる確率が高まりますので、緊急事態にひとりでも多くの人が救急処置を実行し、AEDを使う事が出来ることができるようになっていただきたいと思います。

救命講習のご案内
小牧消防署では月2回の定期的な救命講習会を開催しています。企業や団体から要望があれば、職員が出張しての講習も可能です。その際、通常は講習時間3時間の普通救命講習Ⅰを行いますが、90分で行う救命入門コースを行うこともできます。受講した方々からは、「思ったより簡単だった」と言っていただくことが多くあります。ぜひ受講してみてください。

※役職・肩書きは取材当時のものです。

取材協力