1. AEDトップ
  2. BLOG PCJ
  3. AED導入10年で見えてきた現場の課題
    減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.1

AED導入10年で見えてきた現場の課題
減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.12014.07.01

減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く

AED導入10年で見えてきた現場の課題<br />減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.1

日本国内で広く一般に自動体外式除細動器(AED)が使用できるようになって10年。節目の年となる今年(2014年)4月、「減らせ突然死~使おうAED~」というプロジェクトの実行委員会が設立されました。

会の目的は、「心臓病が原因の突然死」から人々の命を守るために心肺蘇生とAED活用の啓蒙を行っていく、というもの。医療従事者や学校教育現場の関係者、スポーツ関係者など様々な立場のものが参加・協力するプロジェクトの実行委員会から、中心人物のひとりである事務局長の石見 拓氏(京都大学 環境安全保健機構 准教授)ほか、同じく事務局メンバーの千田いずみ氏(京都橘大学現代ビジネス学部 助教)、島本大也氏(京都大学大学院医学研究科 大学院生)にお話をうかがいました。本記事は全3回シリーズの1回目となります。

AEDが歩んだ10年〜社会からの受け止められ方の変化

- 一般市民の方がAEDを使えるようになって今年で10年。AEDが使えるようになった10年前と今ではどんな違いを感じられますか?

石見:
まず、AEDの設置を依頼する際のハードルが下がったように感じます。例えば、10年前なら、野球場や駅構内などの多くの人の目に触れるようなところにAEDを設置しないでほしい、という反応もありました。 利用者に、「AEDが必要になるような危険な場である」という誤った印象を持たれかねない、「責任を負いたくない」という懸念を施設の担当者が持っていたからです。

しかし、現在では多くの施設が導入に前向きです。「AEDを置くことで救命の可能性が高まる事は理解しているし、そうした取組みに力を入れていきたい」という意見がよく聞かれるようになりました。

こうした例でもお分かり頂けるかと思いますが、10年という時間をかけて、日本ではかなりAEDに対する認知は向上したと思います。

桐田明日香さんが気付かせてくれた、AED利活用の問題点

石見:一方、課題や限界を感じる場面も多々ありました。その代表的な出来事はさいたま市で起きた桐田明日香さんの事例です。その場にAEDがあるにも関わらず使うことができず、結果として命を救うことができなかった、という悲しい出来事でした

明日香さんのケースは、私たちAED普及に関わる者にとって大きな衝撃として受け止められました。

私たちはそれまで「反応が無く、通常の呼吸がなければAEDを使え」と、当たり前に伝えていました。しかし、現場では「反応が無いかどうか、普通の状態かどうか判断できなかった」ため、AEDを使う決断ができなかった、というのです。それというのも、明日香さんの場合、けいれんや、死戦期呼吸という、心停止直後によくみられる一見すると呼吸をしているように見える状態があったからです。

これは私たちが想定していた使用基準にリアリティがなかったことに気付くきっかけとなりました。また、救命活動で最も大切といわれる初動の対応を市民ひとり一人の善意と判断に頼っている、という課題に気付かされるものでもありました。

次の10年に向かうためのプロジェクト

石見:そこで、10年という節目の年をきっかけに、心肺蘇生やAEDの普及に尽力する複数の団体を1つのプロジェクト組織体として連携させるような枠組みを設けることになったわけです。これまでは各団体が個別に活動していたわけですが、そこに情報共有の輪を広げていこうとしました。

主な活動は、Facebook ページやwebサイトの立ち上げです。ここでは、実際にAEDを使用した方の現場でのリアルな思いや場面を再現した記録映像や、突然死を阻止するための取組みを紹介しています。こうすることで、「心臓突然死を身近に感じ、自分たちもいざという時に行動を起こそう、自分たちの身近でもこの取組みを広げていきたい」と思って下さる方を増やしていければ、と考えています。

島本:この10年で作ってきたつながりや、各団体が連携してプロジェクトを立ち上げることによって、発信する情報は多くなったと思います。Facebookでは、「コンビニに設置した」などの事例を紹介することで、それを見た人が「自分も同じような取組みをしたいのだが、どうすればいいか?」と事務局に連絡してきてくれることがいくつもあります。また、同じく投稿の内容からヒントを得て、草の根運動的に心肺蘇生やAEDの使い方に関する講習を実施した、という反響もあります。そうした取組みが今後も広がっていくように、いろんな事例を紹介して、たくさんの情報を発信していくことが事務局の大切な仕事のひとつだと思っています。

もっと「身近な問題だ」と思ってもらうために

また、マス媒体、特にNHKとの連携による情報発信も大きな活動のひとつになっています。これによって、心肺蘇生やAEDといった情報に接したことがない人や、自分の身近な問題ではない、と考えていた人たちにも、身近な問題として考えるきっかけを持ってもらえるように働きかけています。
合わせて、最近では、この先の10年のプランを立て、学校教育の充実やAEDの設置・配置基準の周知など、直近の取り組むべき課題の共通認識化を図っています。こうした具体的な取組みができるのは、この10年の歩みがあったからだと感じています。

次回記事に続きます

減らせ突然死 AED プロジェクト