1. AEDトップ
  2. BLOG PCJ
  3. 国民すべてがAEDを使い、突然死から命を救えるように
    〜AED普及 これからの10年の目標
    減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.3

国民すべてがAEDを使い、突然死から命を救えるように
〜AED普及 これからの10年の目標
減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.32014.07.31

減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.3

国民すべてがAEDを使い、突然死から命を救えるように <br />〜AED普及 これからの10年の目標<br />減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.3

日本国内で一般市民にも自動体外式除細動器(AED)が使用できるようになって10年。機器の普及は海外に比べても遜色のないものとなっています。では、これから日本で、「命を救うための社会システム」としてAEDが広まっていくためにはどうすればいいかーー。

ここでは、「減らせ突然死 ~使おうAED~」プロジェクトの事務局長である石見 拓氏(京都大学 環境安全保健機構 准教授)ほか、事務局員の千田いずみ氏(京都橘大学現代ビジネス学部 助教)、島本大也氏(京都大学大学院医学研究科 大学院生)に「AED普及、今後の目標」について語っていただきました。 本記事は全3回シリーズの3回目となります。

※過去2回の記事はこちらを御覧ください。
第1回「AED導入10年で見えてきた現場の課題」
第2回「進むAED設置 もしもの場面で「使えるか」目線での配置が今後の課題に」

すべての人がAEDを使って突然死から大切な命を救えるように
- AEDを活かし心臓突然死を減らすための提言 -

国民すべてがAEDを使い、突然死から命を救えるように <br />〜AED普及 これからの10年の目標<br />減らせ突然死プロジェクト事務局長 石見拓先生に聞く Vol.3

石見:この10年、AEDの普及と啓蒙を続けてきた立場からすると、「社会の理解が深まっている」という実感があります。私だけでなく、実行委員会のメンバーそれぞれがそう感じていると思います。一方、「あともう一歩踏み込めれば…」という風に感じることも多くあります。それを解決するために、私たちは「次の10年」を考えました。

具体的には「AEDを活かし心臓突然死を減らすための提言」として「FROM 4 TO 5」という3つの目標を挙げ、それを実現させるために動き出しています。

具体的に説明すると、次の通りです。

AEDを活かし心臓突然死を減らすための提言1:
- 心肺蘇生を実施する割合を4割から5割へ -

まず、「心肺蘇生を実施する割合を4割から5割へ」という目標に対しては、救急の現場での胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAED使用を促すヒントの提供を行っています。

ここでポイントになるのは、「助ける勇気を支える気風」を醸成すること、もっと踏み込んで言うと、「結果に関わりなく、行動を起こした人は勇気ある行いをした人だ、と尊敬する文化作り」です。

プロサッカー選手の松田直樹さんは、試合前の練習中に心肺停止状態になり、そのまま帰らぬ人になってしまいました。とても残念なことですが、一方でご家族は救命に手を尽くしてくれた周囲の方々に対して大変感謝している、との話をしておられます。

救命活動に参加した人にとっては、そのときのことを振り返るとストレスを感じることもあるかもしれませんが、それをケアする仕組み作りはもちろん、その勇気を讃える文化を作っていくことは、「FROM 4 TO 5」の目標達成のためには不可欠です。

AEDを活かし心臓突然死を減らすための提言2:
- AEDによる電気ショック実施率を4%から5%へ -

石見:次に、「AEDによる電気ショック実施率を4%から5%へ」という目標です。 この実現には、学校現場やスポーツの場での心肺蘇生教育の促進が欠かせないでしょう。例えば学校教育の場には「副読本」のようなもので情報を補いつつ、現場で迷わずAEDを使ってもらうことが重要です。

▼学校での取組み「ASUKAモデル」の普及と実践
学校現場での取組みはすでに始まっています。 「ASUKAモデル*」の推進に市全体で積極的に取り組んでいるさいたま市では、小学校から高校までの授業内容にAEDの使用と心肺蘇生に関して、授業で取り入れられています。

心肺蘇生の教育は子どもたちに単に心肺蘇生の技術を伝えるだけではなく、「命は大切なものだ」ということ、そして「AEDを使えばその大切な命を自分でも救うことができる」ということに気付いてもらえる貴重な機会になっています。「自殺」について教えなければならない昨今の教育現場で、こうして命の大切さを伝えることができるのは非常に重要なことです。

今後は各自治体での取組みだけにとどまらず、すべての教育現場に組み込んでもらえるように、文科省に働きかけを行っていく予定です。小さなころからAEDの使い方や突然目の前で倒れた人を目の当たりにしたときの対処方法を学んでもらった世代が育ち、社会でそれを実践してくれれば、そこから知識が広がっていくはずです。そうして、「国民全員が突然死を減らす力を持つ」ようになれば、と願っています。

千田:実際に教育現場にも変化は起こり始めていると思います。私は京都に来る前、多摩市で心肺蘇生やAEDの使い方について小学生を対象に出張授業をしていました。「小学生にはまだ早すぎるのでは?」という意見もありましたが、子どもたちの反応は「体験できて分かりやすかった」など、前向きな意見がほとんどでした。体験して学ぶ、ということが良かったのだと思います。

そこから、心肺蘇生の方法などを教えることに積極的でなかった先生も、次第に興味関心を示してくれるようになり、それが横のつながりとして「うちでもやってほしい」という動きに広がっていきました。

石見:AEDの普及が「(AEDを使えるようになる、といった)テクニックの話ではなく、勇気をもって大切な命を助けようとする行動の話」に変わっていけば、と考えています。

AEDを活かし心臓突然死を減らすための提言3:
- AEDで電気ショックを受けた方の救命率を4割から5割へ-

3つ目は、「AEDで電気ショックを受けた方の救命率を4割から5割へ」というものです。この目標を実現させるためには、心停止から5分以内に電気ショックを実施できる環境が必要です。そのためにAEDを戦略的に設置するガイドラインの普及をはかり、管理の徹底を行うことを差します。

日本ではAEDの普及は進んでいますが、設置に関するレギュレーションがほとんどない状態です。こんな状況にも関わらず設置台数が増えているのは素晴らしいことですが、一方で「もしものときにきちんと活用できるのか」という視点では、疑問が残ります。

設置に関するガイドラインは、昨年専門家たちによるワーキンググループから出されているものの、実際の現場に普及しているとは言い難いでしょう。そこで、私たちがガイドラインのエッセンスを取りまとめ、分かりやすい、使いやすい形にして配布していきたいと考えています。

*     *

心肺停止による突然死はいつでも、どこでも、誰にでも起こりうることです。もし、それが実際に起こったとき、「そばにいる自分にしかできないことがある」ということを全ての方に知ってほしい、と願っています。

「ASUKAモデル*(http://aed-project.jp/movies/movie5.html)」
学校現場で活用しやすいように作られた心肺蘇生やAEDの使用方法を含む、事故対応テキスト。さいたま市で起きた桐田明日香さんの事例をもとに作られたため、この名がつけられました。子ども達が安心して学校生活が送れるように、との願いを込めて、ひとりでも多くの命を守るため、適時改定されることを前提として編纂され、無料で配布されています。