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山岳地域での
救急救命を考える vol.22018.03.30

〜登山愛好家やアスリートを支えるプロに聞く〜

前回に引き続き、ミウラ・ドルフィンズで低酸素トレーナーとして活躍する安藤真由子さん、自転車競技者のトレーニング事業を展開する株式会社スマートコーチングの安藤隼人さんに高山での救急救命をテーマにお話を伺いました。安藤隼人さんは、登山専門旅行会社に勤めた経験があり、日本登山医学会の認定山岳医制度立ち上げにも携わりました。現在では自転車競技でのファーストエイド啓発活動も積極的に行なっています。

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「滑落事故」の裏にある
その他の要因とは?

山岳地域での<br>救急救命を考える vol.2

登山中の事故としてニュースでよく「滑落」という言葉を耳にします。不注意で足を踏み外したなどの要因が思い浮かびますが、滑落に至る原因は特定されないことも多々あるそうです。
山岳部が多い長野県の山岳遭難統計(平成28年)を見てみると、全遭難の発生件数272件のうち、21件が病気によるものです。一方で、転落・滑落は170件発生しており、長野県での山岳遭難の半数以上を占めています。
隼人さんは転落・滑落の原因には、低血糖や低酸素などの複合的な要因をきっかけにした滑落が含まれる可能性があると指摘します。
つまり、心臓になんらかの疾患が突然起こって滑落したとしても、転落・滑落とカウントされてしまうそうです。

長野県警察ホームページ 山岳遭難発生状況(平成28年)
https://www.pref.nagano.lg.jp/police/sangaku/toukei/toukei16.html

山岳でのAED事情
「救命処置の継続について」

山岳地域での<br>救急救命を考える vol.2

近年のAEDの普及もあり、登山の拠点となる山小屋などの施設にAEDが設置されることも増えてきました。
現状では、添乗員やガイドがAEDを携行するケースはほとんどないそうですが、技術の進歩に伴いAEDの小型・軽量化が進んでおり、多くの人が参加するツアーなどで携行されるケースも増えてくるかもしれません。
しかし、山での救急救命に関する知見が集まる日本登山医学会では、高山でのAEDの携行について、一部で難しい問題も残るとの意見もあります。
それは、突然の心停止を目撃した後、近くの救助者による処置と病院搬送までの連携に多くの時間を要するという問題です。
都心部での事故には救急車が駆けつけ、患者の近くにいる救助者から救急隊員へ、救急隊員から医師へと処置が引き継がれます。一般的な救命講習では、救急隊員に引き継ぐまで胸骨圧迫を続けると習います。
しかし、高所という特殊な状況下で、引き継ぐべき救命処置の専門家が到着する時間はとても長くなります。なかなか救助隊が来られない場合に、胸骨圧迫をいつまで行うのか?という問題や、救助者自身にもリスクが伴う可能性もあります。
「近年ではIOT,ICT技術も進んできており、遠隔医療技術も飛躍的に進歩しています。そうすると、この問題が解決する時代がくるかもしれません。現状を考えれば、最低でも同行するガイドさんや添乗員に、万が一の事故の際に必要最低限の処置ができる知識と経験が求められます。そのような資格の有無も含めてガイドさんや旅行会社を選ぶと、より安心して登山できますね」と隼人さんは語ります。
AEDを取り巻く技術の進歩によって、山岳部での救急救命に関する教育・議論がさらに深まって行くきっかけになるかもしれません。