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ヨーロッパの救急救命の現状2016.11.15

英国での院外心停止

ヨーロッパの救急救命の現状

世界の大都市の一つであるロンドンを首都とする英国。

英国はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国で構成されています。英国の面積は日本の約3分の2の大きさで、人口は日本の約半分です。

世界で初めて航空機内へAEDを搭載したのは、実は英国の航空会社でした。

今回は英国での院外心停止の状況や英国が救命率を上げるためにどのような取り組みをしているのか少しだけご紹介したいと思います。

英国では年間およそ6万件の心停止発生があると推測されています。2013年のイングランドでは、院外心停止で救急隊によって救命処置が取られたのは約28, 000件でした。

これ以外の院外心停止の多くは、既に死亡して数時間経過してしまっていたり、救急隊が到着するまでに迅速な救命処置が行われなかったことや、重度の外傷が理由などで救命に繋がらなかったケースです。

英国での心停止の約8割は自宅やケアホームで発生しています。そして、救急隊到着時に除細動が可能だったケースは全体で約20%でした。
これらを背景したイングランドでの突然心停止の平均救命率は8.6%。データの解析方法が異なるため一概には言えませんが、他の発展都市の救命率(北ホラント州21%、シアトル20%、ノルウェー25%)と比べると、8.6%の数字は決して高いとは言えません。

しかし、英国の首都ロンドンだけで救命率を見てみると2011年から2012年にかけての病院外での突然の心停止における救命率が約32%と英国内で一番となっています。
この数字は、10年前の2001年の救命率の5%と比べると遥かに大きな数字です。
また、バイスタンダーによるCPRは2012年の41%から2014年から2015年にかけて63.1%と向上しているのです。

イングランド全体での救命率はまだまだ低いですが、ロンドンのような救命率向上の取り組みをイングランド各地で行えば救命率がまだまだ向上する余地は十分にあるのです。

英国での救命率向上に向けての取り組み

ヨーロッパの救急救命の現状

英国の各地では、心停止後の早い段階でのバイスタンダーによるCPRとAEDの使用促進で、救命率を上げる事を目指して色々な取り組みが行われています。

ブリティッシュハートファンデーション(BHF)は下記の7つの理念を述べ、政府や行政に実行訴えかけています。

●国民が心停止についての認識や判断が出来るよう、全国的キャンペーンを展開すること
●院外心停止に対する応答時間短縮の為に、地域の救急初期対応者(ファーストレスポンダー)スキームの見直しを含んだ戦略の立案
●中等教育(11-16歳又は18歳)においてのCPRとPAD(Public Access Defibrillation)の認知度向上を目指す教育
●BHFによるUK全土を対象としたPADに関するデータベースの開発投資とその継続的なメンテナンスに対して政府が財政支援を行う事
●設置されているAEDが所在を示すための標識やキャビネットには鍵がかかっていないことなど、一般市民がアクセスできる状態になっているか確認すること
●PAD推進の為に、AEDの設置すべきリストの作成、及びAEDの登録、また、そのAEDがいつでも使用できる状態に整備するための法の整備と心肺蘇生のトレーニングの受講者を増やす為の法の整備
●良きサマリア人法のような、人を救うために無償で善意の行動をとった場合、責任を問われないなどの制度の案内を検討すること

BHFが行ったキャンペーンの中で「ヴィニー・ジョーンズ(Vinne Jones) CPR」というソーシャルメディアを使ったキャンペーンがあります。これは全国的に、日本ではPUSH講習として知られる「ハンズオンリーCPR」の認知度を上げました。また、そのキャンペーンのおかげで約40人もの命が救われたと言われています。

2014年には、BHF、Resuscitation Council (UK) とNHSイングランドが共同で、英国が院外心停止と立ち向かうための挑戦となる概要「院外心停止のコンセンサス」を発表したり、2015年には中等教育からCPRの教育の嘆願書の署名運動で80, 000人の署名を集めています。

日本では、平成26年中に一般市民が目撃した心原性心肺機能停止のうちCPRを実施したのは約54%でした。日本でも英国と同じように、全国各地で色々な取り組みが行われています。一般市民が心停止に「気づく」こと、またその際にどのような対応をすればよいのかを意識させる事がとても重要です。

どの国でもそうですが救命率を向上させるためには、心停止後すぐにCPR実施が実現するための環境づくりが必要です。国によって医療事情や環境は異なりますが、「命を守る」という目的は同じです。他の地域での取り組みを参考にし、そこから学ぶ事も沢山あると思います。 もし、英国の救急事情ついてもっと詳しく知りたい方は是非、調べてみては如何でしょうか。

(参照)

https://www.england.nhs.uk/
http://www.londonambulance.nhs.uk/
http://www.england.nhs.uk/statistics/stasistical-work-areas/ambulance-quality-indicators/
https://www.resus.org.uk/press-releases/training-people-saving-lives/
https://www.bhf.org.uk/news-from-the-bhf/news-archive/2015/february/thousands-back-bhf-campaign-to-get-cpr-taught-in-schools
http://www.londonambulance.nhs.uk/pdf.aspx?page=8539
https://www.bhf.org.uk/news-from-the-bhf/news-archive/2014/february/life-saving-lego
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_3.html