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救命講習を 学校教育の現場へ2017.01.13

〜日本大学習志野高等学校の取り組み 前編〜

千葉県船橋市の日本大学理工学部キャンパス内にある日本大学習志野高等学校では、生徒と教職員を対象に独自の救命講習が行われています。

2006年の学校へのAED導入と同時に教職員全員が救命講習を受け、その後は教職員対象に毎年、新規採用者と希望者を中心に講習を実施してきました。
生徒への救命講習の必要性を感じながらも、授業時間の確保という点から生徒への実施は難しいと思われていましたが、同校では昨年から学校独自で実施できる生徒への救命講習を開始。
どのような経緯で生徒対象の救命講習を学校行事として定期的に実施できるようになったのか、提案者である平舘宏美教諭にお話しを伺いました。

平舘宏美先生

教育現場にフィットする救命講習プログラムとの出会い 

「心停止は『いつでも、どこでも、誰にでも』起こりうることから、学校の危機管理として、教職員対象の救命講習だけでは充分ではないと感じていました」

生徒が安心・安定して学習の成果をあげるためには、心や身体の健康を整えることが大切、そんな強い思いから養護教諭を目指し、生徒が卒業後も心身ともに健やかに過ごせるよう、救命講習を含めた健康教育に取り組んでいる平舘宏美教諭。
平成7年から日本大学習志野高等学校に勤務。平舘教諭は言葉を継ぎます。

「部活動中に心停止があった場合、まず最初に周囲にいる生徒が第一発見者になる可能性が高いです。だからこそ生徒に講習を受けさせたいと考えていました。
しかし、外部に依頼する救命講習では『少なくとも2時間は必要』だという事、そのうえ、先方の都合による急な中止などに講習が左右されることがあります。
そこで、学校独自で実施できる救命講習モデルを探していました。
特に教員が主体となり、生徒に配慮した効果的でわかりやすい救命講習ができないかと心肺蘇生講習の情報を集めていたところ、NPO法人大阪ライフサポートの「PUSH project」に出会いました。」

その後、平舘教諭は、慈恵医大病院での「PUSHコースと開き方講座」を受講し、「45分で学べるPUSHコースなら、学校に導入しやすく、生徒への負担が少ない!」と確信。
受講後すぐに学校の管理職に生徒への心肺蘇生教育の必要性を伝え、PUSH講習について提案したところ「生徒のためになることだから、すぐに学校行事として取り入れよう」と、学校の全面的な支援のもと、大阪ライフサポ-ト主催の「PUSHコ-ス指導者養成講習会」等の研修を受け、「認定インストラクタ-」の資格を得ることができたそうです。
学校の理解と協力があったからこそ、PUSH講習を学校に提案し、数カ月以内に順調に第一回目の救命講習を開催することができたと言います。

「現在は、保健衛生部に所属する体育科教員の協力を得て、運動部員や医療系進学希望者など、生徒および教職員対象の救命講習を年4回実施しています。
生徒が学校卒業後に心停止の現場に遭遇した際に、在学中に受けた救命講習を思い出し、『倒れている人に声をかける勇気』『完璧にできなくてもよいから、何か一つでも自分にできることをする』『周囲の人と協力して命を救う大切さ』につなげてほしいと願って、講習を行っています」

教職員の積極的な関わりがさらに深い救命意識を根付かせる

校内

学校行事として救命講習を定着させるためには、多くの教職員の協力が欠かせません。
実際に日本大学習志野高等学校では、担任や部顧問から生徒への積極的な呼びかけの効果もあり、運動部に所属する生徒だけでなく、一般生徒の受講希望者も増えているそうです。
また、教職員にも参加を呼びかけ、気軽に見学にきてもらい、受講した生徒たちの感想をフィ-ドバックして理解を深めています。

第一回目のPUSH講習では、学年や性別の異なる生徒を受講者として選出するよう、各部活動顧問に依頼。これは、いろいろな生徒に体験してもらい、一人でも多くの生徒に口コミで広めてもらうことが目的です。

講習前は「胸骨圧迫」や「AEDの使い方」にぼんやりとしたイメ-ジしかなかった生徒が、講習を通して心肺蘇生が「他人事ではなく、じぶんごと」であることに気付き、「いざという時には、勇気をもって声をかけたい」「胸骨圧迫の大変さに驚いた」「みんなで協力して一人でも多くの命を救いたい」「AEDを積極的に使って、自分が助けたい」と意識が変化していきます。
今では救命講習は生徒にとって身近なものとなり、「気軽に受けてみようかな」という雰囲気が生徒たちから伝わってくるそうです。

学校と教職員が行う「学校安全」の ハードとソフトの二つの視点からのアプローチ

校内

現在、高校敷地内にAEDは4台設置されています。もともとは3台だったAEDは「校内のどこからでも4分以内にAEDを取りに行けること」を基準に、新校舎移転の際に校舎の広さに合わせて平舘教諭より学校へ1台増設の提案を行ったそうです。

「設置場所は心停止のリスクが高い運動時に備え、グラウンドと体育館に各1台、24時間体制で警備員のいる南通用口と保健室です。大学敷地内と合わせると10台のAEDで生徒および教職員の安全に備えています」

さらに平舘教諭はAEDの設置場所と対応がすぐわかるように、「AED設置場所」と「心肺蘇生フロ-チャート」を作成。これらを各教室と、職員室、昇降口など校内の主要な場所に掲示しています。心停止の際には、壁からはがして現場に持っていき、落ち着いて対応ができるようにとの思いからです。

設置するだけでなく、いざという時にAEDが使用できるように、学校でAEDの管理もきちんと行っています。AEDの点検や消耗品管理は保健衛生部主任、校舎施設は安全衛生委員会の担当教員、体育施設は体育科教員が定期的に確認し、事務課と連携して安全面の改善を重ねています。

このように、日本大学習志野高等学校では救命講習の実施にとどまらず、学校生活のハードとソフトの細部まで配慮する質の高い危機管理が行われているのです。

平舘教諭のお話しからは学校が救命講習の開催にとても協力的だという事、また他の教員の理解がなければ、このようにスムーズに講習が定期的に開催されなかったという事が強く伝わってきました。

「これから、救命講習を授業に取り入れていく事が課題になっていくと思います」

そう言った平舘教諭の笑顔から、今後の新たな試みを感じさせるような課題に立ち向かっていく強さが感じられました。取材中「小さな事から少しずつ広めて行きたい」と、平舘教諭は何度も言っていました。

次回の後編では、平舘教諭が救命講習について、改めて思うことや実際の講習の様子についてご紹介します。

 ―取材協力― 

取材協力